楽しい時間はここまでです。

墓泥棒のボーカル石井のブログ

歌詞紹介その2、『クズになりそう』

石井です。

今回は歌詞紹介の第2弾です。このペースで歌詞の紹介を続けると、あっという間にネタ切れしてしまいそうですが、自分が飽きる前にどんどん書いていきたいと思います。笑

今回ご紹介するのは、墓泥棒のライブの定番曲となっている『クズになりそう』です。

それでは歌詞をどうぞ。





『クズになりそう』


いつだって僕は目の前に
ニンジンをぶら下げてもらえなきゃ走れないのさ
内面も見た目もカッコいい男でありたいけれど
誰かに褒めてもらえなきゃ 何が良いかさえわからない

産んでくれたお母さん お父さん ごめんなさい
いつからだっけな? この顔が大嫌い
愛情っていう借りっぱなしのローンを
今日もジャンプして パンクして 高飛び寸前

クズになりそう クズになりそう
今までどうにかこうにか世間と折り合いつけてきたけど
クズになりそう クズになりそう
やっぱり合わないみたい クズになりそう

そうやって自分を責めてれば
少しだけマシな人間になったような気になれるのさ
そして そんなところまで計算ずくで生きてる僕は
まったく心までシャクれてやがるぜ 不細工だな

「長生きしろよ」なんて
おじいちゃん おばあちゃん ごめんなさい
出来ることならば認知症になる前に死にたい
子供の頃 道徳の授業だけは得意だったのにな
日に日に固まる右脳 「どう解くの?」白紙で解答

嫌になりそう 嫌になりそう
古傷だって騙し騙しうまく付き合ってきたけど
嫌になりそう 嫌になりそう
そろそろ限界みたい 嫌になりそう

人に迷惑かけぬよう 欲に身を滅ぼさぬよう
ただ真っ当に生きること それだけを望んでたのに

産んでくれたお母さん お父さん ごめんなさい
先立つ親不孝者をお許し下さい
いったん立ち止まって休みてぇなって時に限って
信号は青ばかり この馬鹿に先へ進めと

クズになりそう クズになりそう
今までどうにかこうにか世間と折り合いつけてきたけど
クズになりそう クズになりそう
やっぱり合わないみたい クズになりそう

クズになりそう クズになりそう
クズになりそう





この曲の歌詞を書いたのは、墓泥棒を結成して半年ぐらいの頃です。

僕は音楽を始めた当初から、自分の中の汚い部分や負の感情などを歌詞にすることが多かったのですが、今思えば、意識はしていなかったものの【醜い自分に嫌悪感を持てる自分に残されている美しさ】みたいなものを、ずっと表現しようとしていたように思います。

しかし、年月が経ち人生経験を重ねた僕は、醜さというものに対しても鈍感になり、そうやって自分を美化しようとしている自分自身に対してさえ、白けた思いを抱くようになってきました。

なのでこの時期はあまり歌詞が書けず、過去に作った曲をアレンジして演奏したり、自分の内面ではないものを歌った曲を作るしかありませんでした。

「葬り去った過去を掘り起こすのが墓泥棒だから、過去の曲を演奏しても間違いでは無いだろう。」

そんな風に自分を納得させてはいたものの、やはりモヤモヤした思いは膨らむばかり。

「昔みたいに、その時の自分の気持ちをストレートにぶつけられるような歌詞はもう書けないのかな…。」

と、そんなことを考えていた時、ふと気づきました。
「いっそ、このモヤモヤしてる現状を歌詞にしてみてはどうだろう?」

そう思った僕は、頭の中に散り散りに存在していたたくさんの言葉をかき集め、一つの曲の中に詰め込みました。

歌詞が【浮かんでくる】という表現からは果てしなく遠い、歌詞を【掘り起こす】作業。それを重ねて出来たのがこの『クズになりそう』です。


端的に言うと、若い頃に当たり前のようになれると思っていた真っ当な人間像からどんどんかけ離れていく現在の自分に対する白けた思いと、まだギリギリ踏み止まれるのではないかという微かな(本当に微かな)期待との間の葛藤を歌った歌詞となっています。

この時期に考えたフレーズだけでなく、何年も前に思いついていたけど歌詞に使う機会が無かったフレーズで「広い意味で捉えれば今回のテーマと合致する」と思ったものも多く使っていて、それまでの僕と比べると強引と言ってもいいような手法で書き上げた作品です。

おかげでこの曲以降、そういう歌詞の書き方が出来るようになり、自分の歌詞のスタイルが一つ増えました。この曲を作ることができたのは墓泥棒にとっても僕自身にとっても、非常に大きかったと思います。


ところで、1番に
「ジャンプして パンクして 高飛び寸前」
という歌詞がありますが、これは当時僕が「闇金ウシジマくん」という漫画にハマっていたため、その漫画に登場する業界用語を使ったものであります。

※ジャンプ=債務者が借金の利息分だけを払い、元金の返済を先延ばしにすること

※パンク=利息が膨らみ過ぎて、債務者が借金の返済を行うことが事実上不可能になること

※高飛び=借金返済の義務を放棄した債務者が、闇金業者の取り立てから逃れるため海外等に逃亡すること

ちなみに、僕と同じ闇金ウシジマくんが大好きなドラムの田淵くんは、僕が説明しなくても歌詞の意味をすぐに理解してくれてました。笑

僕はこういう感じで、どこかで聞いて頭に残ったフレーズを歌詞の一部に使うのが好きなのです。(それについてはまたの機会に書きます)


全体的にかなりネガティブな内容の歌詞ではありますが、曲調はシンプルなパンクロックでメンバー内でもかなり人気のある曲のため、墓泥棒のライブには欠かせないナンバーとなっております。

また、僕個人としてもお気に入りの曲であり、弾き語りでライブする時もほぼ毎回歌っています。

サビの歌詞とメロディーはすごく覚えやすいと思いますし、お客様にも一緒に歌っていただけるとテンション上がりますので、ぜひお願いします。笑



それでは今回はこの辺で。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。